年々、“記録的な猛暑”という言葉が常套句となるような日本の夏。ますます、炎天下の屋外で体を冷やす“暑熱対策製品”の需要が増し、市場が一段と賑わいをみせています。“着るクーラー”として数年前に登場したのが“電動ファン付きウエア”というタイプで、[アシックス]の「AIR CONDITION WEAR」(税込2万9700円)や[アイリスオーヤマ]の「クールウェア」(税込4600円)などが発売されて話題となりました。
年々、進化が進み、より高い冷却効果をうたった製品が登場するにつれ、これまでベンチャー企業が主流だった市場に大手企業が続々と参入し、まさに熱い闘いを迎えています。
ヘッドホン状で首に直接引っ掛けて体を冷やすウエアラブル(身に着ける)クーラーを開発して注目されたのが、[サンコー]の「ネッククーラーNEO」(税込5980円)。この製品には、“ペルチェ素子”という半導体が応用されています。直流の電気を流すと、導体(素子)の片面では吸熱(冷却)し、もう片面では発熱(加熱)するという性質を持っており、その冷却面を人体に接触させて熱を奪う仕組み。
ペルチェ効果を活用したウエアラブルデバイスに参戦してきたのが、[ソニー]の「レオンポケット」(税込1万6500円前後)。冷やすだけでなく暖めることも可能で、夏は“着るクーラー”として、冬は“着るヒーター”として1年中使用できる充電式の“着るエアコン”です。4年前の1号機デビューから、昨年、その4代目モデルとなる「レオンポケット4」が発売。首の後ろにポケットが付いている専用のインナー(別売)を着て、そのポケットに本体(スマホよりやや小さめのパネル)を入れて使うか、付属の専用ネックバンドに本体を直接肌に触れるよう、首元に装着して使います。
[ワークマン]がパナソニックHDの子会社[シフトール](東京)と共同開発した“着るエアコン”が、2023年発売の「WindCore ICE×HEATER ペルチェベスト」(税込1万9800円)という冷暖ウエア。ペルチェ素子を応用し、ベストの背中側に組み込んだアルミプレート(ハガキ1/2大)をボタン一つで冷却・加熱を切り替えられます。操作がスマホ経由ではなく、シンプルなスイッチ式なのが特徴。昨年、発売3カ月で、販売計画数だった3万着が完売するほどの人気商品。
工事現場などでの作業着以外に、各種アウトドア、野外フェス、スポーツ観戦といったアミューズメントや外回りの営業での使用など、ペルチェ素子の高いエネルギー効率と確かな冷却機能は、日本の夏のアウトドア風景を変えると言われています。ただし、どんなに優れた素材といっても、これだけで熱中症対策はできません。水分補給はお忘れなく。
※参考:
アシックス https://corp.asics.com/jp/
アイリスオーヤマ https://www.irisohyama.co.jp/
サンコー https://www.thanko.jp/
ソニー https://www.sony.jp/
ワークマン https://www.workman.co.jp/
日経МJ(2024年1月5日付)
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