リモートワークが普及し、オフィスに人が集まらないことで大きな影響を受けたのが「社員食堂(以下、社食)」でした。コロナ禍によるオフィス自体の縮小・売却に伴い、社食のような福利厚生施設の減少が加速。経営の足かせになるとさえ言われ、“社食不要論”が噴き出しました。しかし、ある調査によると、リモートワークを導入した企業の社員の半数以上が“社員間のコミュニケーション不足”をデメリットとして挙げています。社内においてコミュニケーションの量が減り希薄になると、離職率が高まり生産性の低下を招く恐れがあるということが指摘されています。この状況を、看過できない重要な問題と捉え、コミュニケーション不足を解消する効果的な解決策の一つとして、今、企業の間で再び「社食」を整備する動きが広がっています。
“安い・速い・外出しなくてよい”というのが、これまでの社食の評価点でした。働き方が変わってしまった今、その評価基準も変わり、単に空腹を満たすための場から、コミュニケーションを促す場としての社食に注目が集まるようになったのです。
[NEC]では社食を“会社の枠を超え、食を通してイノベーションを紡ぎだす場所”と位置付け、名前も「FIELD」と命名。一つの空間の中で多様なアクティビティーを叶えるゾーニングで構成されているのが特徴。
[丸紅]の社食「〇Café(マルカフェ)」のコンセプトは“日本一おいしい社員食堂”で、“コミュニケーション・リラックス・健康支援”を促進する場として位置付けられています。[ヤフー]の社食は、仕事を“山”と捉え、レストランが「BASE」、カフェが「CAMP」。朝・昼・夕食、一日に3000人程度に利用されています。[エイベックス]の社食は、オフィス17階にアメリカ西海岸をイメージした造り。“ホテルラウンジ”“広場”など6つのエリアで構成。[ファンケル]の社食のテーマは、“社員の美と健康を育む”。“タニタメニュー”と“ファンケルメニュー”の2種類あり、料金は各350円。青汁が無料で飲めます。
ほかにも、環境に配慮した食材を積極的に使用し、『SDGs社食アワード 企業賞』を受賞した[セガサミーホールディングス]や、“日本一、野菜のおいしい社内カフェ”を掲げた[ルネサス エレクトロニクス]。食べ終えてトレーを返却すると摂取したカロリーや食塩量がディスプレイに表示。健康経営の一環としての役割を担う[味の素]の社食など。
企業イメージのシンボリックな役割を担い、離職率低下や企業エンゲージメントの向上に大きく貢献する社食。もちろん、社食があれば必ず社員の満足度や生産性が上がるという単純なことではないでしょうが、“給料”よりも“働きやすさ”や“福利厚生”に重きを置く若い世代にとっては、進化型社食の果たす役割はとても大きいと思われます。
※参考:
NEC https://jpn.nec.com/
丸紅 https://www.marubeni.com/jp/
ヤフー https://about.yahoo.co.jp/
エイベックス https://avex.com/jp/ja/
ファンケル https://www.fancl.co.jp/
セガサミーホールディングス https://www.segasammy.co.jp/ja/
ルネサス エレクトロニクス https://www.renesas.com/jp/ja/
味の素 https://www.ajinomoto.co.jp/
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