コロナ前から市場全体が下降傾向にあったカラオケ業界。2016年から4年連続で減少し、ピーク時(1996〜1997年)に比べ、6割弱に縮小。
仲間を募って店まで出かけ、名前を書いて受付して、1時間でいくらというシステムの、いわゆる普通のカラオケ店や、アルコールがらみのスナックやカラオケバーなど。今どきの“酒離れ”の進む若い人たちにとっては、まとまった時間とお金が必要な上、ある種の“重さ”がつきまとい、足が遠のくのもわからないではありません。
ちょっとカラオケで歌いたいだけ----そんな、従来のカラオケ業界、カラオケファンのニーズから見るとニッチともいえる市場を開拓したのが、業界最大手の[第一興商](東京)でした。“カラオケをいつでもどこでも気軽に”をコンセプトに開発された箱型カラオケボックス「COCOKARA(ココカラ)」です。従来とは異なる新しい歌唱環境を創出する機動性、意外性を込めて名付けられました。
高さ2.4m、幅・奥行き各1.5mの公衆電話ボックスのような箱の中には、モニター、ヘッドホン(2個)、マイク(2本)、椅子(2脚)、デンモク(カラオケシステム「DAM」)の設備が。定員は4名となっていますが、1〜2名が密になりすぎずちょうどいい空間。予約は不要で、料金は時間単位ではなく、1曲ごとに100円(現金・Suica・バーコード決済などに対応)。もちろん、1曲だけ歌って退室してもかまいません。自身の歌声は、外部スピーカーではなくヘッドホンから聞こえる仕組みなので、ボックスの外部に音漏れする心配はありません。
全国のアミューズメント施設やショッピングセンターなどのパブリックスペースに設置。買い物ついでや仕事の合間の空き時間にサクッと1曲歌いたいというニーズに応えます。今後は、コインランドリーやカフェ、サービスエリア、バー、食品スーパー、空港、スーパー銭湯などへの展開を検討中。中には、乗客が電車の待ち時間に楽しめるようにと、駅の待合室に設置された例や、社員の気分転換やストレス発散など、福利厚生の一環として「ココカラ」を導入している企業も。外からは人影が見える程度ですが、人が行き交う場所で歌うことに抵抗があるという人のために、メーカーでは「擦りガラスタイプ」のボックスも用意。なお、設置費用や収益の配分方法などは個別対応とのことですが、設置する施設運営側にとっては、施設内の遊休スペースの有効活用で利用客に新たなサービスを提供できるというメリットが生まれます。
“こんな所に?”という場所にポツンと置かれている「箱型カラオケボックス」。ふらっと入って歌えるという新鮮な体験が味わえる、カラオケの新しいスタイルです。
※参考:
(一社)全国カラオケ事業者協会 https://www.karaoke.or.jp/
第一興商 https://www.dkkaraoke.co.jp/
日経МJ(2023年11月8日付)
|