ここ10年ほどの海外のEV市場の成長は目覚ましく、その市場規模は、2020年の販売台数で、中国が100万台、欧州が72万台、米国が25万台に達したのに比べ、日本
は1万4600台と大きく水をあけられた感は否めません。また、2021年の国内EV販売に占める輸入車の割合は4割強と、対前年比21.5%の上昇に対し、国産EV車の上昇率は6.3%にとどまっています(日本自動車販売協会連合会)。
それにしても、2009年に[三菱]が「i-MiEV」を、翌2010年には[日産]が「リーフ」と世界に先駆けてEVを発売し、一時は世界のEV市場をリード。つい2年ほど前まで、国内EV市場は日系メーカーが8割超を占めていたものでした。
ではなぜ、投入時期は遅れていなかったのに、世界の急ピッチなEV化の流れに乗り遅れてしまったのでしょう。数ある要因の中でも最大の要因は、日本のメーカーが、EVよりハイブリッド車(HV)に開発・販売力を傾注してきたことにあるといわれています。日本が誇る高性能なHVの技術が、結果的に国内のEV市場への本格参戦を躊躇させていたとは、なんと皮肉なことでしょう。
EV化に及び腰気味の日本メーカーを尻目に、EVで先行する欧州ブランドの面々がこぞって上陸。続々と日本のEV市場で販売攻勢をかけます。
輸入車の筆頭クラス[テスラ]は、2021年の販売台数が前年の1900台から5200台超と伸び、輸入EV全体の底上げに貢献。
2030年までに新車のすべてをEVにすると衝撃的な発表をした[メルセデス・ベンツグループ]は、昨年、日本で2車種目となるEVを投入。[プジョー]の新型車は、輸入EVとしては手頃な412万円で販売。さらには、今年2月、韓国[ヒョンデ](旧ヒュンダイ/現代)がEVとFCV(燃料電池車)の2車種で日本市場へ復帰しました。
巻き返しを狙う日本勢も、今年、EVの新型車投入を本格化。“EV元年”といえるほどのスケールで車種の拡充を図ります。
2030年までに車種の半分以上をEVかHVにする方針の[日産]からは「アリア」を。
2030年に350万台をEVに。そのために8兆円を投資するという[トヨタ]は「bz4x」
を。2030年までに全車種の4割以上をEV、HV、PHV(プラグインハイブリッド車)にする
方針の[スバル]は、[トヨタ]と共同開発した初のEV「ソルテラ」を5月に発売。[三
菱]は、[日産]との共同開発による、軽のEVを販売予定。
政府は昨年、2035年までに乗用車の新車でガソリン車をゼロにし、電動車(EV、HV、
PHV、FCV)100%を実現するという方針を定めました。22年度予算で、購入費や充電イ
ンフラ整備費などの補助を一気に拡充し、375億円を計上。
世界のEV保有台数は2018年〜2020年の直近3年で約2倍に急伸しました。“価格
が高い”“使い勝手に課題がある”など、EVに対して日本でよく耳にする話は、もは
や世界で通用する段階でなくなってきているようです。ガソリン車の販売規制が決ま
った以上、メーカーとしてはEVという舞台で戦わざるを得ません。すでにほとんどの
海外メーカーが、世界戦略として“次世代車はEV”と明確に位置付けている以上---。
※参考:
(一社)日本自動車販売協会連合会 http://www.jada.or.jp/
テスラジャパン https://www.tesla.com/ja_jp/
メルセデス・ベンツグループ https://www.mercedes-benz.jp/
プジョー https://www.peugeot.co.jp/
ヒョンデ https://www.hyundai.com/jp/
日産自動車 https://www.nissan.co.jp/
トヨタ自動車 https://toyota.jp/
スバル https://www.subaru.jp/
三菱自動車 https://www.mitsubishi-motors.co.jp/
日経МJ(2022年2月21日付)
朝日新聞(2021年12月15日付/2022年4月6日付/同4月13日付/同4月15日付)
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