“気温が●●度を超えると冷菓がよく売れる”など、天候と商品の売り上げとの相関性や、天候が人々の消費行動に一定の変化をもたらすことはよく知られています。このことに着目して、天候の変化を先取りすることで消費者の行動を予測し、さらに商品・サービスの需要予測を立ててビジネスに有効活用しようというのが「ウェザーマーケティング」で、小売業などでは以前から注目されており、それ自体は決して新しい概念ではありません。しかし近年、コンピューター性能の進化やAIの発達などにより、気象に関する予測精度が著しく向上。ピンポイント情報など予測エリアの細分化が実現し、分析がより精緻に、かつスピーディーになったことで、改めて熱い視線が注がれるようになってきています。
パリパリとしたモナカの香ばしさが売りの[森永製菓]のアイス「チョコモナカジャンボ」にも、気象データを活用した“鮮度マーケティング”が導入されています。パリッとした状態を長時間維持するという難題を解決するために[日本気象協会]の「商品需要予測サービス」を採用。気象予測に基づいた需要を“読んで”製造量を決め、全国の各エリアへの出荷配分を決定します。また、気温や天候に応じてテレビCMの出稿量の調整を実施。売り上げアップが見込まれる気温上昇時にCM本数を増やして、さらなる需要喚起を狙います。
フードロス削減にも気象データが一役買っています。
愛知県のスーパー[義津屋]では、商品需要予測サービスの一つ、「売りドキ!予報」を活用し、天候に応じて総菜の店内調理の量を決めています。全国の小売店の数年分のPOSデータとひも付けた情報に、約1600万件のツイッターのつぶやきによる“体感指数”も加味。客観的データに基づいた数字で示してもらうことで廃棄量が激減したとのこと。
世界最大の民間気象情報会社[ウェザーニューズ](千葉)は、気象データ提供サービス「ウェザーテック(W×Tech)」を展開。全国に約1万3000地点に及ぶ日本最大の気象観測網と、ユーザーから一日約18万件寄せられる地元情報を生かしたピンポイントな情報提供が最大の強み。
[パナソニック]は、昨春発売した戸建住宅用燃料電池「エネファーム」にウェザーテックの“停電リスク予測データ”を導入。停電の可能性がある場合、自家発電モードへの切り替えのタイミングをバックアップしてくれます。
防虫剤メーカーの [エステー]では、需要がピークを迎える衣替えの時期を予測するのにウェザーテックを活用。販売店にPOPや特設売り場を作るタイミングを伝えます。
天候状況によって生じる“欠品による機会ロス”や“作り過ぎ・過剰仕入れによる廃棄ロス ”といった課題の解決に大きく貢献し、今後ますます企業のマーケティングには欠かせぬ要素になってきそうな気象予測。どうやら、消費者のマインドだけでなく、天候も先読みすることが、新たな商機を引き寄せることにつながりそうです。
※参考:
森永製菓 https://www.morinaga.co.jp/
(一社)日本気象協会 https://www.jwa.or.jp/
義津屋 https://www.yoshizuya.com/
ウェザーニューズ https://jp.weathernews.com/
パナソニック https://panasonic.co.jp/
エステー https://www.st-c.co.jp/
日経МJ(2022年2月4日付)
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