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■“日本で挙式”がステータス。インバウンドで挽回狙う、「婚礼市場」。
 インバウンド(訪日外国人)効果で潤っているのは、観光や小売り業界ばかりではなさそうです。婚礼サービスを中心とした国内のブライダル市場も大いに恩恵にあずかっているようで、その要因は、日本での挙式を希望する外国人が急増していること。
 外国人が新婚旅行を兼ねて日本で結婚式を挙げることを「インバウンド婚」と呼ばれています。国別では、香港、台湾、中国の順で、圧倒的に中華圏からの訪日客が多く、韓国がそれに続きます。これは、アクセスの良さだけでなく、日本人がハワイなどでの海外ウエディングに憧れるのと同じ感覚で、アジア圏の恋人たちにとって“日本で挙式”が一種のステータスでもあるのです。

 婚礼サービス各社では、アジア圏のカップルを取り込もうと、インバウンド婚へのアピール合戦が繰り広げられています。
 沖縄を中心とした“リゾート婚”事業で国内1位の[ワタベウェディング]は、今年4月、韓国(ソウル)にリゾート婚プランの販売を手掛ける現地法人「ワタベ コリア」を設立。
 挙式・披露宴サービスの[エスクリ]も昨年、台湾に現地法人「エスクリ タイワン」を設立。リゾート婚プランを台湾のカップルに向けて提案する直営サロン「Bright Day Wedding」をオープンしました。
 [タカミブライダル]は昨年、業界初となる総合ブライダルサロン「THE DRAPE」をオープン。式場、衣装選びから挙式のプラン、リゾート婚の案内までをワンストップで対応。大阪・心斎橋という訪日客でにぎわうエリアの好立地を生かし、インバウンド婚の専用カウンターを設置。2020年には500件のプロデュースを見込んでいます。

 少子化や“なし婚”の増加で、国内のブライダル市場は、毎年、少しずつ、しかし確実に縮小しています。そんななかに訪れたインバウンド景気の恩恵。仏滅などにこだわらないため施設の稼働率が高まり、挙式前に撮影するウエディングフォトには惜しみなくお金を使うので地方の観光地にとってはPRや活性化につながると大歓迎。さらに、収益性の高い長期滞在をトータルでパッケージ販売できるとあって、観光業界にとっても魅力大のインバウンド婚。

 写真撮影の際、新婦に日傘をさしたり、おしぼりをさりげなく差し出したり、メーク中で動けない新婦にストロー付きで飲み物を提供したり……日本で挙式した外国人カップルたちは、式以上に、日本ならではのきめ細やかな心遣いに感動して、自国に帰ったら友達にも勧めたい、と言います。同世代のカップルに口コミやSNSで伝わることが、日本のブライダル業界にとって、何よりの販促となるようです。

※参考:

ワタベウェディング        https://www.watabe-wedding.co.jp/
エスクリ             https://www.escrit.jp/
タカミブライダル         https://www.takami-bridal.com/
日経МJ(2019年3月15日付/同 4月8日付)

■大量廃棄時代に秘策あり。アパレル在庫の、新・再生法。
 年に2回新作が登場し、それが半年でセール品になったり、アウトレットに回るというサイクルの速さが特徴のファッション業界。トレンドという、情け容赦のないジャッジのせいもあって、まさに“腐らない生もの”と称されるアパレル商材ですが、宿命とはいえ、昨年、国内に出回った衣料品(下着は除く)のうち、なんと半数以上が売れ残り在庫となり廃棄という末路を辿ることに(経産省)。生鮮食品でも流通在庫の廃棄率は10%程度ですから、いかにファッション業界の廃棄の規模が大きいかということがわかります。

 そんな事情のもと、在庫の処分を巡って、売り手と買い手をつなぐ新たなビジネスが生まれています。その一つが、ブランド品の売れ残った新品在庫を買い取り、ブランド名がわからないようにタグを付け替えて、より安価で再販するという仕組み。打ち出したのは、アパレルのリセール(再販)関連企業、[FINE(ファイン)](名古屋)。同社の工場で、襟タグや洗濯用の品質表示タグなど、ブランドネームの入ったものをすべて外し、新たに同社のブランド「Rename(リネーム)」のタグを縫い付けていきます。2017年の立ち上げ以降、買い取り先は、大手アパレルメーカーから通販、総合スーパー、百貨店、セレクトショップなど拡大を続け、昨年の買い取り実績は130万点に上りました。

 アパレルや百貨店から発生する在庫を、購入したいバイヤーにつなぐ仲介サイト「SMASELL(スマセル)」を開設しているのは、[ウィファブリック](大阪)。買い手は主にディスカウントストアやセレクトショップのバイヤー。同社が支持を集める理由は、売り手が出品の際、細かな販路指定を出すことができる点にあります。例えば、“〇〇百貨店での販売は禁止”とか“ここから2km以内での販売は禁止”という具合に。同社はこのシステムで「2018年 日経優秀製品・サービス賞」を受賞しています。

 “過剰在庫”と“廃棄”。この大きな問題を解決するために、ブランドイメージを傷付けることなく再び商品として再生できるということは大きな魅力です。そこには、廃棄コストの削減、さらに消費者にとっては定価より安く手に入るなど、幾重にもメリットが付帯しています。
 アパレルの2次流通市場のなかで盛り上がりを見せる、廃棄を減らすための新たな“在庫処分方法”。それは、私たちに、洋服の価値とは? ブランドの価値とは? を問いかけているようです。

参考:

経済産業省           http://www.meti.go.jp/
FINE             https://c-fine.jp/
ウィファブリック        https://www.wefabrik.jp/
日経МJ(2019年1月25日付)
日経産業新聞(2019年4月18日付)

■“あったらいいのに”が実現。なにかと便利な「街角個室」。
 テレワークの普及が拡大している今どきのビジネスパーソンの味方として、最近、公共の場に相次いで出現しているのが、移動の合間や商談前後のすき間時間などに安心して仕事ができる空間、「街角個室」サービスです。各社、昨年から、本格稼働へ向けて実証実験を重ね、仕様やサービス内容など、具体的な詰めの段階に入っています。

 先陣を切ったのは、[東京メトロ]と[富士ゼロックス]が共同で開発した、駅構内に設置する一人用ブース「サテライトオフィスサービス」。昨年6月から今年3月まで、4駅で実証実験を実施。高さ約2m、幅1.6m、奥行き1mの電話ボックスのような個室に、イス、テーブル、コンセントをはじめ、無料Wi-Fi、液晶モニターから膝掛け、鏡、文具まで備わっています。実験中の利用料は15分200円(税別)。今後は、駅構内だけではなく、オフィスビルにも設置予定。
[JR東日本]が導入を検討しているのは、ウェブ会議システムの[ブイキューブ]が開発した一人用オフィス「テレキューブ」。昨年11月から今年2月まで、新宿・東京・品川の駅構内に4台ずつ設置して実証実験が行われました。「ステーションブース」と名付けられた一人用は、高さ2.2m、幅×奥行き1.2m×1.2m。机とイス、24インチモニター、コンセント、USBポート、スピーカー、Wi-Fi、防犯カメラ、非常ボタンなどを装備。JR東日本では、2020年までに、コワーキング(共同のオープンオフィス)型の「ステーションデスク」と、複数人利用可能な個室「ステーションオフィス」を加えた、全3タイプを30カ所に設置する計画です。
 さらに、この「テレキューブ」に食指を動かしたのが[三菱地所]。昨年11月から今年3月にかけて、大手町と丸の内のオフィスビル3棟のエントランスに設置して実証実験を試みました。
 いずれの“個室”も、外からは見えない造りで、扉を閉めると外部のざわめきが微かに聞こえる程度の遮音性の高さ。利用方法は、基本的に、利用したい時間帯を事前にスマホ予約の上、ブース到着後、スマホで電子キーを開けるという仕組みです。

 子育ての味方となる個室も登場しました。育児関連サービスの[トリム]が開発販売しているのは、授乳やおむつ替えなどに使えるベビーケアルーム「ママロ」(利用料は無料)。高さ2m、幅1.8m、奥行き90cmの木製ボックスで、中からカギがかかる完全個室タイプ。現在、市役所・公民館といった自治体施設や、大型ショッピングセンター、レジャー施設など、全国の公的空間、約70カ所に設置されています。

 移動中の“ちょっとした時間”を有効に活用するための“ちょっとした空間”。それほど遠くない将来に、空港や銀行、コンビニなど、都会の至るところに「街角個室」が林立しているという光景も、あながち……。

参考:

東京地下鉄(東京メトロ)       https://www.tokyometro.jp/
富士ゼロックス           https://www.fujixerox.co.jp/
ブイキューブ            https://jp.vcube.com/
JR東日本              https://www.jreast.co.jp/
三菱地所              http://www.mec.co.jp/
トリム               https://www.trim-inc.com/
日経МJ(2019年2月18日付)

今月号は、いかがでしたでしょうか?
来月もちょっとした情報をお送りいたします。

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