ここ数年、食用油に対する健康価値の見直しを背景に、「アマニ油」や「エゴマ油」など、素材由来型といわれるヘルシーオイルへの注目度が高まり、テレビの健康情報番組などで再三にわたり紹介されたこともあって広く浸透、定着してきました。なかでも、とりわけ大きな伸びを見せているのが「アマニ油」です。
注目される理由の一つが、アマニ油だけが持っている栄養素にあります。ヒトが体内で生成することができず、外から(食品)の摂取が必要となる“オメガ3脂肪酸”を豊富に含んでいる点です。ゴマ油やオリーブ油にはほとんど含まれていないこの成分は、魚に多く含まれていますが、現代の肉食化が進んだ日本人の食事では、よほど意識して魚を食べない限り摂取量は不足がちとなってしまいます。“アマニ効果”としては、アレルギー症状の緩和や血液をサラサラにして生活習慣病の予防、便秘改善。さらには、脳細胞を活性化させ認知症予防にも。また、代謝を促進させる働きがあるためダイエット効果や美肌効果などが期待されます。
実は、右肩上がりで順調に推移してきたかに見えるアマニ油ですが、2015年に爆発的なブームが起きた後、2016、2017年と伸びは鈍り、市場は縮小に向かいました。価格がオリーブ油の5倍、サラダ油の20倍ほどすることも拡大の足かせの一因といわれています。しかし、エゴマ油、ココナツ油といった、一時脚光を浴びた食用油が軒並み大幅な落ち込みを見せるなか、アマニ油だけが盛り返したのです。
2018年度で前年比60%超の伸びを見せ、国内出荷額は過去最高を更新しました。その背景には、売り場での地道な栄養素認知の努力、加えて商品開発と新たな摂取提案を抱き合わせたメーカーの取り組みがあります。
加熱に弱く、炒め物や揚げ物には不向きのアマニ油は、味にクセがなく、そのまま生でいろいろな料理に合うのが特徴。サラダをはじめ、みそ汁や野菜ジュース、納豆、ヨーグルトなどに“かける”“あえる”といったドレッシング感覚での生使いが浸透してきたことも需要増に大きく貢献。若年層にも“アマニファン”の裾野が広がりました。
“調理”するための油から“摂取”する油へ-----一度落ち込んだ食用油が、これだけ復活するのは珍しいといわれたアマニ油の、今後の動向が注目されます。
ちなみに、アマニ油の摂取基準量は、一日1.6g〜2.0g、およそ小さじ1杯程度です(厚労省)。
※参考:
厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/
食品産業新聞社ニュースWEB(2019年5月4日付)
日経МJ(2019年5月20日付)
日本食糧新聞(2019年6月17日付)
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